Mari Takenouchi, a journalist and the blogger of Save Kids Japan & World Known as a Japanese single-mother journalist covered by Reporters Without Borders in 2014 on the criminal accusation case for a tweet. My twitter account is @mariscontact (under control and rarely gets retweeted) To order a new book by Mari Takenouchi and Dr. Bandazhevsky, send me an e-mail at takenouchimari@gmail.com Twitter: @mariscontact 私の主なブログは以下です!!ご覧ください!!! See my blogs below!! ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

2013年5月16日木曜日

バンダジェフスキーの新刊本:セシウムの生殖系への影響


放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響

チェルノブイリ原発事故その人口損失の現実(2011年)

 

ユーリ・I・バンダジェフスキー/NF・ドウボバヤ著

久保田護訳(20134月)

皆さん、ぜひ読んで!特にこれから子供を産む人!
それと医師の方々、特に産婦人科の方は皆、読むべきだと思っています!

 
 
 
以下要約版 竹野内真理 (まだ途中)



 

 

ベラルーシ共和国ではここ最近10年間、この問題の適切な解決がみつかってない。出生率が急速に下がり、子供の死亡率と有病率が上がり、異常や先天性奇形を持つ子供も増えている。

 

1960年には、ベラルーシの人口増加率は17.8パーミル、ところが核実験で1963年にCsの降下量が多くなると、1965年以降は5.9パーミルに下がり、チェルノブイリ事故後1993年以降は、とうとう死亡率が出生率を上回り、99年にマイナス4.92005年にマイナス5.5となった。

 

94年から2008年にかけてベラルーシの人口は607400人も減少。特に15歳以下の子供の減少は特筆に値し、20002009年には29万人も減少。

 

20002008年にベラルーシでの先天性奇形や発育異常のある新生児の数は10万につき、359.5から558.7に増加。さらに生殖能力が失われていて子供ができないケースがはるかに増加。

 

ただし、登録された奇形は氷山の一角に過ぎない。発育の大事な時期に、セシウムその他の放射性物質に絶えずさらされていれば、成人後、必然的に体の不調に悩まされる。

 

ベラルーシ議員と原子力ロビーは、傑出した遺伝学者であり、奇形学者でもあるG.I.ラジューク教授の先天性・遺伝性疾患研究所を閉鎖した。

 

IAEAWHOを長年にわたって、1959年の協定により、牛耳ってきた。

 

突発性の心停止による成人死亡例も、出生前後の発育過程で心臓の構成要素の形成が阻害されることが真の病因であるケースもある。その証拠に子供の心電図異常がみられること、異常とセシウム濃度の間に相関があることが確認されている。

 

ただし、子供の心電図異常をもたらす病変は子供が死亡する直接の病因とはならないが、この異常はほかの病気の経過に悪影響を与えることあり。一例としてウィルス性の感染症で死亡した、セシウムも心筋に混入していた乳児のケースあり。

 

被曝の影響で心血管系の異常と免疫系の異常が誘導され、病気になることがあるが、このことが考慮されることはない。

 

女性の体内でセシウム137が40Bq/kgを超えると、性ホルモン産出の逆転が起き、月経周期も異常になる。これらの異常は生殖器の病気の原因のみならず、不妊症の原因になる。女性ホルモン産生異常があれば、子宮粘膜と女性生殖器官の準備態勢を整えることができないからだ。

 

体内セシウムが50Bq/kgを超えると、ホルモン異常は顕著になり、6人にひとりに排卵がみられなかった。セシウムの影響で月経周期の黄体期不全と無排卵症が起きる。この無排卵症と黄体機能不全により、不妊症となるが、汚染地域で出生率が下がっている主な原因の一つは不妊症である。

 

ヨウ素131とセシウム137が大量に取り込まれると、2つの放射性物質の影響が重なり合って、卵子の形成が抑制されることが多くの研究から明らかになっている。

 

若い女性に放射性セシウムが取り込まれると、ホルモン産生の恒常性が障害され、低プロゲステロン血症、高エストロゲン血症、高テストステロン血症を背景として起きてくる。

 

15~40Ci/km2の環境で暮らしている少女たちの生殖器官の発育は遅れ、37%で第二次性徴の発言が遅れ、81%の少女に月経周期の異常、脳下垂体性腺刺激ホルモンの分泌異常が39%、31。5%にステロイドホルモンの産生障害がみられ、他にも内分泌機能の低下と生殖機能の調節障害も示された。

 

男性生殖器(内部被ばくについての医学的情報はほとんどない)

 

150mSv で一過性の無精子症になる可能性あり。

 

増殖中の精原細胞は、電離放射線の照射に極めて傷つけられやすい。

 

男性機能と精子の形成は、複数のホルモンによって調整されており、受精能力は主にこれらホルモンの産生と関連。(下垂体性濾胞刺激ホルモンFSHは精子分泌上皮に作用、ライディッヒ細胞のテストステロン分泌は抗体形成ホルモンLHによって刺激を受け、睾丸の内分泌部は、これら性腺刺激ホルモンによって制御される。)テストステロンは精子幹細胞に直接作用し、状態を変化させ、FSHは精原細胞の有糸分裂を促進、精子形成の完成も促進。

 

性ホルモンの産生は、外部被ばくと内部被ばくの影響で減少することが示されている。

 

動物実験でセシウム137を摂取したオスの生殖器官形成に悪影響がみられ、テストステロンの産生と精子の形成が障害された。

 

セシウム137は生殖細胞を直接的に障害し、生殖細胞の構造や機能を変化させる。また生殖細胞のゲノム構造も変化させる。

 

RI.ゴンチャロワとN.I.リャボコニの研究では、セシウムを与えたマウスに生殖細胞と骨髄細胞の染色体とゲノム突然変異増加がみられた。

 

同様の研究が住民を対象にして!チェルノブイリ事故後に行われたが、メンデルの遺伝法則に従う遺伝性の病気や多因子性の先天性奇形の発生頻度に、体内に取り込まれたセシウムの影響が現れたと言うことはできなかった。(なぜだろう?)

 

ただし、ゴメリで7~8年住んだあと、ミンスクに移住した子供たちの末梢血リンパ球では、二動原体染色体と環状染色体の形態をとる染色体異常の頻度が高かったことが確認されている。これらの染色体異常は、放射線被曝によって起きる不安定型染色体異常の指標として知られる。

 

チェルノブイリの非常事態が収束した後、発育奇形の数がベラルーシ全土で急激に増えた。多発性発育奇形、手足の縮小奇形、多指症の頻度の増大が大きく寄与。新規の優勢突然変異が大きく関与。

 

土壌汚染が15Ci/km2の郡では、1997年~1998年に生まれた子供たちの奇形発生率が対照群より高いことが示された。

 

同じ餌を与えても、メスのほうがオスよりも体内セシウム濃度は低くなるが、妊娠は別である。

 

哺乳類でも人でも、放射性セシウムの大部分は胎盤に吸収され、胎児の体内にはほとんど取り込まれないが、妊娠中の病気や胎児の発育によっては、胎児の臓器で放射性セシウム濃度が非常に高くなることがある。

 

放射性セシウムは、授乳期間中、母乳を介して母親から子の体内に入り込み、子のセシウム濃度が上昇し、母体のセシウム濃度は低下する。

 

子宮内で発育期にセシウム137の影響を受けたラットは、自分でえさを取るようになると、えさの中の放射性セシウムをより多く体内に取り込むようになる。さらなる研究が必要だが、子の出生後の生存に子宮内での発育期がほかにないほどの重要性を持っていることを示唆する。

 

チェルノブイリ事故後に、先天性発育障害がゴメリだけでなく、ベラルーシ全体で増えたとする科学的報告はあるが、セシウムは全く考慮されなかった。

 

妊娠1525週で医療上の必要性で中絶した胎児と胎盤のセシウム濃度は、胎盤が61.5Bq/kg前後、胎児が25.4前後だった。

 

中枢神経系の先天障害のある胎児では、胎盤のセシウム濃度は85.4Bq前後だった。中枢神経系の先天性奇形は、特に無脳症とのう胞性二分脊椎が多くみられた。

 

妊娠中ゴメリに住み、分娩当日死亡した子供では、内臓にセシウムが多く蓄積。心臓、腎臓、肝臓、甲状腺の実質細胞に顕著な変性と変性壊死があることが組織学的検査で指摘。

 

セシウムが妊娠中の母体に入ったラットの子供の臓器における病的変化:心臓→繊維間浮腫、心筋細胞瀰漫性壊死および変性、肝臓→幹細胞のタンパク変性、ディッセ腔の拡大、肝小葉中心部の充血、腎臓→糸球体の破壊、輸入細動脈の攣縮、尿細管上皮の変性

 

セシウムが妊娠中の母体に入ったラットでは、胚子と胎児の発育過程が著しく障害され、子宮粘膜への着床段階での胚子の死亡(流産)として現れる。またラット胎児の骨組織には、大部分の骨格筋の骨か標識部位の低形成という形態をとる病理変化が起こる。またラット胎児の臓器の細胞には、変性と変性壊死が起きる。

 

妊娠中のシリアンハムスターにセシウムが取り込まれると、多因性の先天性奇形が出現する。これは遺伝的な血管と環境要因の影響が重なって発症すると信じられている。

 

欠陥ゲノムを持っていても、形質発現しない場合があるが、放射性セシウムが少量でも体内に取り込まれると、欠陥ゲノムが形質発現しやすくなる。

 

セシウムの影響で細胞がエネルギー不足に陥り、母親―胎児系に代謝障害が起き、多因性の先天性奇形が発症すると考えられる。

 

胎盤の構成成分が損傷されると、胎盤の内分泌機能と免疫調節機能が障害され、これが胎児の奇形形成に大きな役割を演じている可能性あり。

 

先天性奇形の胎児では、放射性セシウム濃度が著しく高いが、これは胎盤の障壁機能の低下を意味している可能性がある。

 

妊娠した女性にセシウムが取り込まれると、胎児で大きなホルモン分泌の変化が起こる。

 

放射性セシウム濃度が胎盤で高くなると、胎児男女とも、臍帯血エストラジオール濃度が著しく低下、臍帯血テストステロン濃度は顕著に高くなった。

 

胎盤の放射性セシウム濃度が高くなると、母親の血中甲状腺ホルモン濃度が明らかに高くなった。

 

胎盤の放射性セシウム濃度が高くなると、母親の血中甲状腺ホルモン濃度及び血中コルチゾール濃度が明らかに高くなったが、胎児の臍帯血中のコルチゾール濃度は低下した。

 

母親―胎児系にセシウム137が入ると、なによりもまず、発育中の胎児に顕著なホルモン濃度の変化が起き、副腎皮質にセシウムが強く取り込まれることが注目される。

 

セシウム137が取り込まれると、ミトコンドリアの酵素系に機能障害が起きる。

 

セシウムが副腎皮質のホルモン産出細胞に悪影響を与えるため、男性ホルモンのテストステロンの産出が増加し、女性ホルモンのエストラジオールが減少するとも考えられる。副腎皮質の主要なホルモンであるコルチゾールの整合性が障害されるからという仮説である。この状況が、下垂体性副腎皮質刺激ホルモンの産出増加に拍車をかけ、副腎皮質の細胞を刺激してテストステロンの過剰産生を招く。そして副腎皮質の先天性機能不全の状況が起きる。これは以後の子供の発育過程に間違いなく悪影響を及ぼすだろう。

 

セシウム137が母体に及ぼす影響

 

l  性機能の調節も含む内分泌異常

l  生殖器の筋組織と血管壁のトーヌス(緊張度)の変化

l  子宮やほかのすべての臓器への血液供給が障害され、臓器の機能障害

l  母親および胎児の間の神経調節連関の異常

l  母親の免疫機能が下がることで、子宮内感染症の特徴を有するウィルス感染症と細菌感染症が母親―胎児系に起きやすくなる。先天性奇形や先天性免疫不全が起きることもある。

l  腎臓の病変により、体外へ放射性セシウムや毒素を出すのが遅れ、胎児の発育異常が起こりやすくなる。

l  セシウムが著しい量取り込まれると、赤血球数が減少する。そして子宮内で胎児や新生児に低酸素症が起きる。

l  母親と胎児の代謝で重要な役割を果たしている肝臓の多くの機能が阻害。まずは肝臓の合成機能に阻害。毒物、神経伝達物質、ホルモンなど、体にとって異物である環境因子を中和する能力も阻害。タンパク、脂肪、炭水化物、ミネラルの代謝調節も阻害。幹細胞の損傷、脂肪変性、タンパク変性が母親―胎児系の代謝異常を招く。

l  子宮・卵管の病変と、結果起きる胎児の発育障害。

l  胎盤にセシウムが取り込まれると、胎盤の細動脈や毛細血管といった血管網や栄養膜芽層細胞と相互作用するようになり、血液循環障害、ホルモン産出変化、内分泌系変化が起こる。

 

胎盤は、セシウムが胎児に組織に入り込むことを制限するが、様々なことが原因となり、胎盤の障壁作用が低下すると、胎児の組織に入り、傷つけ、先天性奇形を引き起こす。

 

セシウム137は細胞のエネルギー産生能力を劇的に弱めてしまい、代謝の全過程を障害し、とくにタンパク分子の生合成を阻害する。そのため、セシウム137が奇形の発生に関与している可能性が十分に考えられる。

 

シリアンハムスターの実験で、中枢神経系や頭蓋骨の顔面部分、心臓の奇形などの発育障害例がみられる。

 

多因子性先天性奇形の発現は、遺伝的な欠陥の存在と、欠陥の発現を誘発する環境因子の作用に関連する。

 

セシウムは、親の世代では内在し、形質発現しなかった遺伝的な欠陥を子供の代で形質発現させる誘発因子として働くことがある。(この場合、セシウムの体内取り込み量は多くなくとも胎児に異常が発現する)

 

母親と胎児の間の調節関係には、免疫系、内分泌系、神経系などの調節系の関与、生合成の適正な速度の維持、表現形質の発現に必要な胎児組織の分化があるが、ゲノムの欠陥とセシウムの作用は調整関係を壊す。

 

心臓、中枢神経系、硬口蓋、外性器は、解剖学的に複雑に構成されている器官で、原則として長い奇形形成の臨界期を持つ。

 

セシウムの奇形形成への関与は胎児の骨格コツの形成で特に明瞭に見られ、骨の低形成を引き起こす。

 

セシウムにより、胚子と胎児の死亡が起きる可能性がある。

 

母親の内分泌系がセシウムによって悪影響を受けると、子宮内発育の初期の段階で、卵巣ホルモンの産生が異常になり、結果、胚の着床に対する子宮粘膜の受け入れ態勢が整わない事態が生じる。

 

放射性物質が、卵子、受精卵-接合子、分割胚―桑実胚、胞胚に入り込むと、後になって発育中の胎児の組織に深刻な病変が生じる可能性がある。

 

遺伝的な欠陥と内分泌状態の逆転の併存は、非常に頻繁に見られる。

 

セシウムが体に取り込まれると、その影響で子供の親の世代の女性と男性の両方の生殖細胞のゲノムに欠陥が生じることは疑いようがない。

 

またセシウムが胎児期に影響すると、その病理作用が出生後の子供に現れる可能性がある。胎児期や出生後の段階でセシウムが作用すると、様々な臓器、特に免疫系、内分泌系、神経系、心臓、肝臓、腎臓の高度に分化した細胞が損傷を受ける。

 

授乳期間中、母親は大量の放射性セシウムを母乳中に排出するため、母乳を子供に与えることは容認できない。(ベラルーシでは100Bq/kgの牛乳が許されている)

 

内分泌系と免疫機能が低下した状態で起きる病気はたいていの場合、感染症である。(だが感染症によって、真の病因であるセシウムの作用が隠されてしまう)こういう場合、放射分析検査が必要である。

 

年長の子供の死亡例の臓器にもセシウムの蓄積が認められ、甲状腺、副腎、すい臓、心筋に高濃度で集積する特徴がある。組織学的な検査でも、甲状腺、、副腎、すい臓、心筋が障害されていた。

 

胎児と新生児では、障害された重要臓器の細胞の変性と変性壊死はたいていの病変部位で生命維持が不可能なほどであった。

 

免疫系の障害により、結核、ウィルス性肝炎、慢性肝炎の急性憎悪、。中毒性の肝変性、肝硬変症、肝臓の慢性変性による肝性脳症や肝不全が増え、一般的に見られるようになった。

 

腎臓はセシウムを体外に排泄する器官の一つなので、セシウム濃度が高いことは偶然ではない。大人だけでなく、子供でも、糸球体装置と尿細管を障害する病理過程が進行する。

 

また、血管の病変が糸球体に壊死性病変を引き起こし、腎不全の原因となっているが、ほとんどの場合、潜伏性で症状が表に現れない。セシウムの影響により、尿毒症になるが、臨床医には突然発症したかのように見える。

 

ベラルーシでは最近、腎臓に腫瘍性病変がある人の数が増えている。


心筋細胞の細胞質にセシウム137が入り込むと、それにともない心筋細胞ではエネルギーの産出が不足し、タンパク同化作用が低下する主な原因となり、特に心筋繊維の収縮に関与するたんぱく質の生合成を低下させる。

すると、身体的なストレス、神経精神医学的影響、毒物の影響などどのようなストレスを受けても、心臓と全身血管系の活動の異常が起きてくる可能性があり、その例が拡張型心筋症である。
 
放射性セシウムは低濃度であっても刺激伝導系を通る電気パルスの伝導障害を引き起こす可能性がある。

 
細胞内遺伝装置の活動の調節(刺激)系の機能を阻害する外部環境要因は、多くの病気を引き起こす誘発因子となるだろう。

子供の内分泌異常の原因となるものに、子宮内の発育期間と発育期におけるセシウムの影響があり、副腎の低形成とホルモンの産出不全が見られる。

上記ホルモンの産出不全には、コルチゾール、すい臓、生殖腺、そして甲状腺について同じことがいえる。

セシウム137とヨウ素131の相乗効果で西ヨーロッパでは甲状腺がんと自己免疫性甲状腺炎の罹患率が高くなった。(セシウムの役割もヨウ素に劣らない)

セシウム137は、甲状腺の細胞のエネルギー産出をむしばみ、細胞死をもたらすだけでなく、細胞の修復と細胞内の修復を傷害し、細胞の分化も妨げる。さらに細胞の構成成分が免疫系に対して抗原となることを促進する。

甲状腺に対する放射性セシウムの影響は、組織の活動に対する免疫調節の異常という観点からだけでなく、甲状腺の細胞の構成要素に対する損傷も考慮する必要性あり

短寿命のヨウ素131の崩壊は、エネルギー放出に伴い細胞内の遺伝装置の構造を破壊し、前述の病理過程が比較的急速に進行する。

子宮内でセシウム137の影響を受けると、子供に免疫不全が起きてくることは臨床的にも実験的にも確認されている。

子供の免疫不全が潜在性の状態にとどまっている場合には、アレルギー性疾患や感染症が高い頻度で発症してくる。

出生後の発育期にセシウムが免疫産出器官に入り込むと、慢性の免疫不全状態になる。この慢性免疫不全は、主要性疾患と感染症が発病する一つの原因となったり、子供のリンパ系と造血系組織のがんが増加する原因になったりする。

神経系はセシウムの影響で傷つけられる。対立遺伝子の欠如などの遺伝的な素因があると、中枢神経系の奇形が起きることは、動物でも人での実験でもわかっている。

中枢神経系の奇形は多因子性グループに属し、外脳症、頭蓋脳ヘルニアのような奇形がもっとも頻繁にみられる。

セシウムの影響は、胎児期および発育期に細胞内修復機能にたけた活発な神経細胞を傷つけ、神経系に特有な構造を形成することを阻害する。

出生後にセシウムが入ると、神経系の細胞では生理活性をもつ物質の代謝が徹底的に阻害される。

中枢神経系の悪性疾患がどんどん増加しているのは、放射性セシウムが中枢神経系の組織に大量に入り込むことが原因となっている。

1992年から2001年にかけて、脳腫瘍はリンパ系組織や造血系組織の悪性新生物とともに、ベラルーシの子供たちの腫瘍性疾患の構成の中で、主要な位置を占めてきた。

以上のことから、セシウム137については、以下のように考えるべきである。

1.体細胞の突然変異の原因であり、悪性新生物増加の主要な原因の一つ
2.生殖細胞の突然変異の原因であり、次世代の出生前、出生後の病理変化の基盤になる。
3.重要臓器の細胞内エネルギー産出過程を阻害し、20-30Bq/kgでは、生殖細胞に突然変異を起こし、先天性奇形や子供の不整脈などの病気の発症に関与する。
4.50Bq/kg以上では、エネルギー産出破壊にともなう変性壊死が進行、拡張型心筋症などの原因となる。

チェルノブイリの被災者の多くの病気の罹患率上昇の根本的原因はこの中にあるだろう。

第二部 チェルノブイリ原発事故で被災したウクライナ住民の生殖に関する健康状態

ウクライナでは86年から95年までの間に自主的に16万人が移住

2011年初頭、義務的移住区域(ゾーンII)のジトミール州には、まだ532家族が残り、そのうち113家族には14歳以下の子供がいる。ゾーンIにも150人の自責定住者たちが住む。

チェルノブイリ事故後、人々の生殖損失(妊娠100あたりの自然流産数、医療上の必要性からの人工妊娠中絶数、死産数と生後6日以内の子供の死亡数)が、絶え間なく上昇した。

1987年には3.5%以下だったのが、1994年には郡によって異なるが、9.4~25%に達した。

生殖損失のうち85%以上が自然流産だった。自然流産のウクライナ総人口における頻度は、5~25%に達している。

ただし早期の流産は全妊娠例の8%で起きているのだが、多くの場合、妊婦本人にもきづかれない。

1983~85年の生殖損失率は、2000年には汚染地帯で2.4倍、非汚染地帯で1.5倍。

放射能汚染された地域に住み、累積染料が高い女性は、非汚染地域の女性と比べ、自然流産の危険性が高いことは確認されている。

1987年以降、後期妊娠中毒症(1.5~2.3倍)と妊娠性貧血(10.0~13.8倍)の発症率が年々上昇し、分娩時合併症も上昇。

汚染郡では死産の発生率が2.1倍に。

自然流産の主な原因の一つは先天性奇形

ウクライナとベラルーシの科学者たちの研究によって、先天性異常、発育血管、生殖損失の数が増加したことが示された。しかし、UNSCEARは2000年、先天性障害は増えてないと結論













 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2013年5月15日水曜日

安倍晋三と極右歴史修正主義者は、世界の敵である Shinzo Abe, a Far-rightist, History Revisionist Prime Minister: Muneo NARUSAWA

成澤宗男: 安倍晋三と極右歴史修正主義者は、世界の敵である Shinzo Abe, a Far-rightist, History Revisionist Prime Minister: Muneo NARUSAWA
See English version of this article in the Asia-Pacific Journal: Japan Focus.
"Abe Shinzo, a Far-Right Denier of History."

中国語版はここをご覧ください。安倍晋三 - 极右历史窜改主义者是世界和平的最大敌人
韓国語版はここをご覧ください。아베 신조와 극우 역사수정주의자는 세계의 적이다



 
新年のご挨拶を申し上げます。

Peace Philosophy Centreのブログが始まったのは2006年秋、第一次安倍内閣の時代でした。戦争への反省をもとに作られた日本国憲法を基盤とする教育基本法が、議論も尽くさず、「タウンミーティング」におけるやらせ質問などの不正を経て改変されたのが2006年12月15日のことでした。そして6年後、安倍内閣は復活し、時計の針は戻されました。6年前に戻るどころか、安倍氏と下村文科相をはじめとする仲間たちは「未来志向」などと言いながら、実際は戦争の反省と被害への謝罪を表現した村山談話、河野談話、東京裁判を否定することによって侵略戦争と敗戦、現憲法までをも否定し、時計を戦前に戻そうとしているようです。原発についても安倍自民党は時計の針を半世紀戻しているように見えます。自民党は「原発ゼロは無責任」と言いましたが、「無責任」はまさしく、原発を地震大国に導入し、起こるべくして起こった大事故への責任感も皆無、原発再稼働どころか新設までしかねないこの政党に当てはまる言葉です。当サイトの2013年第一弾は、『週刊金曜日』の成澤宗男氏による、安倍復古主義首相の過去から現在に至る歴史否定の足取りを追う記事です。間もなく英訳も発表します。(1月10日追記、英語版発表しました。)
この記事はリンク歓迎、拡散を希望しますが、転載希望の場合は必ずinfo@peacephilosophy.comに連絡ください。 乗松聡子 @PeacePhilosophy
(1月4日追記。一部元原稿が正確に掲載されていなかったところがあったため4日に訂正投稿してあります。)


安倍晋三と極右歴史修正主義者は、世界の敵である


週刊金曜日企画委員 成澤宗男


2013年1月2日


序章


 日本軍による南京大虐殺が起きて75年を迎えた2012年の12月、この恐るべき事件を歴史の記憶に刻み、伝え継ぐことによって二度と日本が他国と戦火を交えず、東アジアの平和を生み出すための教訓としようと考えた少なからぬ日本人にとって、極めて大きな試練が課せられた。


 同月16日に実施された総選挙の結果、前回の2009年8月の総選挙で敗北して野党に転落していた自由民主党が圧倒的多数を占め、再び政権の座に就いたのだ。しかも、首相に返り咲いたのは、極右歴史修正主義者の安倍晋三に他ならない。もはや、日本国内だけに留まらない段階となった。


なぜならこの自民党は、いまだ日本軍による加害の記憶が鮮明な中国や韓国、北朝鮮といった諸国に対し、この記憶自体があたかも歴史的に正確さを欠き、他国からの記憶の呼び起こしを求める隣国の声は不当な言いがかりであって、それに耳を傾けるのは「自虐的」と主張する歴史修正主義者の巣窟である。のみならず、自民党のこうした恥ずべき体質を最も雄弁に象徴するのが、安倍だからだ。


日本は19519月の対日講和条約の調印によって国際社会に復帰したが、日本から被害を受けたアジア諸国にとって前提とされたのは、日本が大日本帝国と決別し、自らの行為を加害者として隣国に心底から謝罪することであったはずだ。だが戦後のドイツ連邦共和国の出発点がナチズムとの決別とホロコーストへの謝罪であったのに反し、戦後日本の大半の時代を与党として君臨した自民党は常に歴史修正主義者の拠点であり続け、今もそれはまったく変わらない。


おそらく世界は、「ホロコーストはなかった」などと主張する政治家がドイツの首相に就任するという事態は想像しがたいだろう。だが南京大虐殺から75年たった現在、世界が目撃しているのは、日本の新首相が、今も南京大虐殺は「虚構」などと主張する歴史修正主義者の側に立つ政治家であるという驚くべき光景なのだ。


そのため、日本軍によっておびただしい数の人々が犠牲になり、その目撃者、体験者もまだ生存しているアジアの諸国民、そして北米を始めとしたアジア系コミュニティの人々は、この極右歴史修正主義者の首相に対し、「南京大虐殺は『虚構』だと考えているのか」、「日本が隣国を侵略したという歴史事実を認めるのか」と改めて質す正当な権利がある。


とりわけ韓国や北朝鮮、そして世界のコリアンにとっては、南京大虐殺と並んで大日本帝国が手を染めた最も残忍で恥ずべき犯罪の一つである従軍「慰安婦」について、「どのように認識しているのか」と安倍に質すことが急務である。なぜならこの首相は、今でも公教育の歴史の授業から、従軍「慰安婦」の既述を削除することに執着しているからだ。


このような人物が首相である限り、日本が国際社会復帰から61年が経とうとしている今日においても、改めてそこでの一員たりうる資格があるのか否かの正当性が根本的に問われるべきだろう。この作業の責務は、何よりもまず日本人が負う。同時に繰り返すようにアジアを始めとした世界の諸国民にとっては、そうした問いかけは正当な権利として与えられているはずだ。


1 安倍という政治家


 安倍は、自民党の中でも特異な存在である。この男は、外務大臣など要職を歴任し、自民党の総裁候補者の一人でもあった父親・安倍晋太郎の七光りで1993年に初当選して以来、一貫して党内有数の極右修正主義者として行動することにより、現在の地位を勝ち得たといってよいからだ。以下、その経歴を列挙する。


  • 安倍は当選したばかりの19938月、自民党の「歴史・検討委員会」の委員となる。この「委員会」は右派の学者を招いて20回ほどの会合をもち、その検討内容をまとめて95815日(日本の敗戦記念日)に『大東亜戦争の総括』なる本を出版する。そこでは、大東亜戦争」(アジア太平洋戦争)は侵略戦争ではなく、自存・自衛の戦争であり、アジア解放の戦争であった。 南京大虐殺、「慰安婦」などの加害はデッチあげであり、日本は戦争犯罪を犯していない。加害責任もない。 教科書には、侵略や加害についてありもしない既述があり、新たな「教科書のたたかい」(教科書を『偏向している』と攻撃する)が必要である――と既述してあった。現在の安倍も、同じ認識である。

  • 敗戦から50年目の19958月に侵略戦争への反省が盛り込まれた国会決議が採択されようとしていた動きに反対し、「歴史・検討委員会」のメンバーを中心とした右派の「終戦50周年国会議員連盟」が199412月に結成された際、安倍は事務局長代理に抜擢される。この「議員連盟」は、神道系を中心とした極右宗教集団と連携して「終戦50周年国民運動実行委員会」を運営し、「日本は侵略国家ではなかった」「戦争に反省する決議には反対する」という主張を盛り込んだ決議を、全国26県議会、90市町村議会で可決させた。
  • 党内のこうした右派議員は19966月、歴史教科書への攻撃を狙った「明るい日本・国会議員連盟」を結成し、安倍は事務局長代理となる。さらに安倍は19972月に結成された同じ歴史教科書への攻撃に特化した「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(2004年に『日本の前途と歴史教育を考える議員の会』と改名)の事務局長となった。
  • 安倍は常にこうしたグループの先頭に立ち、「従軍『慰安婦』は売春婦」だとして歴史教科書からの従軍「慰安婦」や南京大虐殺の既述削除に向けて奔走する。教科書を検定する文部科学省の官僚のみならず、教科書会社の社長や教科書執筆者に対しても、侵略戦争や従軍「慰安婦」の既述が「わい曲されている」などと詰問し、削除するよう圧力をかけた。
  • 安倍が官房副長官だった2001130日、日本の公共放送であるNHKが放映した番組「戦争をどう裁くか(2)問われる戦時性暴力」の制作に事前に介入し、従軍「慰安婦」を扱った箇所についてNHKの放送総局長に「ひどい内容だ」「公平で客観的な番組にするように」「それができないならやめてしまえ」と攻撃した。その結果、放映された番組の内容が大きく変更された。その中には、200012月に東京で開催された「女性国際戦犯法廷」の席上、日本軍による強姦や慰安婦制度が「人道に対する罪」を構成すると認定し、日本国と昭和天皇に責任があるとした部分の全面的カットが含まれる。

2 「河野談話」への攻撃

 宮澤喜一首相時代の199384日、「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」(河野談話)が発表される。そこでは、官房長官の河野洋平が主に以下のような内容を述べていた。

「調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」

この河野談話に対し、同じ自民党ながら最も激しく攻撃したのが安倍であった。

  • 安倍は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」とはかり、会合に河野を呼び、「確たる証拠もなく『強制性』を先方にもとめられるままに認めた」などと「談話」を攻撃したが、河野は屈しなかった。さらに安倍は1997527日にも衆議院決算委員会で「従軍『慰安婦』は強制という側面がなければ(教科書に)特記する必要はない。この強制性については、まったくそれを検証する文書が出てきていない」と発言している。
  • 安倍は幹事長当時の2004614日、日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が主催したシンポジウムの席上、「河野談話」を無視し、「従軍『慰安婦』という歴史的事実はなかった」と断言し、「文部科学省にも教科書改善(注=従軍『慰安婦』の記述削除)への働きかけを積極的に行っていく」と述べている。

3 首相時代の二枚舌

安倍は2006926日、首相に選出される。だが、一国の代表としてそれ以前の極右歴史修正主義者の姿を貫くことは最初から無理があった。そのような姿勢は自民党、あるいは日本国内で通用はしても、到底国際社会では多大な嫌悪感と反発を招くのは明らかだった。特に安倍が醜態をさらしたのは、従軍「慰安婦」をめぐる問題であった。

  • 安倍は2006104日、衆議院本会議で、河野談話について「政府の基本的立場は、河野談話を受け継いでいる」と答弁した。これに対し、安倍を支持していた右派勢力から批判があがったためか、200735日の参議院予算委員会で、「河野談話をこれからも継承していく」と述べながらも、「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性、狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」などと答弁し、河野談話の「強制性」について修正が必要との考えを示唆した。
  • 米下院議会で2007131日、「『慰安婦』問題で日本政府に対し謝罪を求める決議」案が民主党のマイク・ホンダ議員によって提出された際、安倍は「決議が採択されても謝罪するつもりはない」「慰安婦を日本軍兵士が拉致・強制したとの『狭義の強制性』の証拠はない」などと繰り返した。「河野談話」自体、政府の名において「従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる」と「謝罪」しているにもかかわらずだ。しかも「強制」されたのでなく彼女たちがあたかも「自主的」に「日本軍兵士」の相手をしたと言わんばかりのこの発言は、米国の『ニューヨーク・タイムズ』や『ロサンゼルス・タイムズ』、『ボストン・グローブ』といった各紙に批判された。
  • このためか、結局安倍は外国(特に欧米)の目を最後まで無視するわけにはいかなかったようだ。BBC2007427日、訪米した安倍がブッシュ大統領とキャンプデービッドで会談した際、「極めて痛ましい状況に慰安婦の方々が強制的に置かれたことについて大変申し訳なく思う(I feel deeply sorry that they were forced to be placed in such extremely painful situations.)」と発言したと報じている。また、米『ニューズウィーク』430日号は、訪米に先立って安倍をインタビューした記事を掲載したが、安倍は「私たちは、戦時下の環境において、従軍慰安婦として苦難や苦痛を受けることを強制された方々に責任を感じている(We feel responsible for having forced these women to go through that hardship and pain as comfort women under the circumstances at the time.)と発言している。ここでは「強制性」を明らかに認めており、二枚舌と批判されても仕方なかった。

4 再び牙をむく

 安倍は2007912日、国会での所信表明演説を行った直後、各党の代表質問を受ける当日になって突然政権を投げ出し、辞任するという前代未聞の醜態を演じた。世論から「無責任」との批判が浴びせられるが、何ごとも忘れやすい国民の性格に助けられて2012926日、再び自民党の総裁に選出される。その前後から、前の首相時代に保守派や右翼を失望させた「失敗した歴史修正主義者」の汚名を挽回するかのように、再び極右的言動を強めていく。

  • 名古屋市長の河村たかしが220日、中国共産党南京市委員会の幹部と面会した際、「いわゆる南京事件はなかったのではないか」と語り大きな問題になった。これに対して右翼勢力は36日、東京都内で「『河村発言』支持・『南京虐殺』の虚構を撃つ」と題した「緊急国民集会」を開いたが、安倍はそこに「河村支持」のメッセージを送った。さらに同年83日と924日には、右翼勢力の「機関紙」ともいえる『産経新聞』に「河村たかし名古屋市長の「南京」発言を支持する意見広告」が掲載されたが、安倍は主な「呼びかけ人」の一人となっている。
  • 2012828日付の『産経新聞』で、安倍は首相時代に自身が「引き継いでいく」と明言したはずの「河野談話」について、また一転して「(自民党が与党に復帰すれば)見直しをする必要がある。新たな政府見解を出すべきだろう」と発言した。しかも「見直し」の対象は、1982826日に、宮澤喜一官房長官が、教科書の検定にあたっては「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」を定めると発表した「宮澤談話」=「近隣諸国条項」敗戦から50年経った1995815日、村山富市首相が発表した「談話」の二つも含まれる。
この「村山談話」には、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」と記されている。なおこの「村山談話」についても安倍は前首相時代、「政府の認識」だと答弁していた。

  • なお、安倍新内閣の菅義偉官房長官は1227日の記者会見で、「河野談話」について「学者や専門家の研究が行われている。そうした検討を重ねることが望ましい」と見直しを示唆した。前首相時代に一度は実質的に認めた従軍「慰安婦」の「強制性」を、また蒸し返す可能性が高い。菅官房長官はこの会見で「村山談話」については、「歴代内閣の立場を引き継ぐ考えだ」と述べたが、その3日後の12月30日、安倍は産経新聞の単独インタビューに答え、「村山談話は、社会党の首相である村山富市首相が出された談話だ。21世紀にふさわしい未来志向の談話を発出したい」と言っている。安倍は「村山談話」が発表された当時、これに攻撃を加え、前首相時代には「引き継ぐ」と変えながら、首相を辞めた後に「見直す」と公言した。また首相に返り咲いたと思ったら一週間も経たないうちに「引き継ぐ」と「見直す」との矛盾したメッセージを世に対して送っている。
  • 2012410日、自民党本部で党の「文部科学部会」と「日本の前途と歴史教育を考える議員連盟」の合同会議が開かれた。そこでは文部科学省の担当者が呼ばれ、高校の教科書検定について報告したが、安倍は従軍「慰安婦」の記述について「動員された」「かりだされた」とする記述があると非難し、「自分は総理のときに、『いわゆる従軍慰安婦の強制連行はなかった』と国会で答弁したが、一体、いつ変更したのか?なぜ(政府答弁を)無視するのか?」と詰問し、また「強制性」を問題にした。安倍によれば、従軍「慰安婦」について記述すると、「常識からかけ離れた教科書」(2011510日に都内で開かれた右翼の集会での発言)なのだという。なおこの席では、自民党議員たちは、「中学校の教科書から従軍『慰安婦』の記述が削除されたのに、高校の教科書に記載されている」との批判が相次いだ。
なお、この「『いわゆる従軍慰安婦の強制連行はなかった』と国会で答弁したが、一体、いつ変更したのか」という安倍の主張はおかしい。安倍が示しているのは前首相時代、辻元清美衆院議員の質問書に対する2007316日の閣議決定をへた答弁書のことだ。ここでは「河野談話」について、「政府の基本的立場は、官房長官談話を継承している」と言明している。

「河野談話」では、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった」「その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と、その「強制性」を認めている。

安倍首相時代の2007年の答弁書では、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである」と述べているが、特に「河野談話」と食い違っているわけではない。なぜなら、「河野談話」を取りまとめた当時の 石原信雄官房副長官は、次のように認めているからだ。

「結局私どもは通達とか指令とかという文書的なもの、強制性を立証するような物的証拠は結局見つけられなかったのですが、実際に慰安婦とされた人たち16人のヒヤリングの結果は、どう考えても、これは作り話じゃない、本人がその意に反して慰安婦にされたことは間違いないということになりましたので」、「調査団の報告をベースにして政府として強制性があったと認定したわけです」(アジア女性基金オーラルヒストリー・プロジェクトの聞き取りより、200637日)。

したがって安倍が今になって、教科書に「動員された」「かりだされた」という記述があるのを怒るのは不思議である。「資料」ではなく、従軍「慰安婦」にされた女性自身の聞き取りからそのような記述は裏付けられているのであって、何もおかしくはない。「変更」などなかったのは、安倍自身も含め歴代内閣が「河野談話」を「継承」すると宣言しているからだ。安倍は、わずか5年前の自分の行為の意味もわからないほど愚かなのか。

  • 安倍は20121226日、新内閣の閣僚を発表したが、19人の閣僚中、これまで一貫して教科書から従軍「慰安婦」や南京大虐殺の記述を削除させる策動を続けてきた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーが約半数の9人加わっている。さらに、神道勢力を中核とする日本最大の右翼団体である「日本会議」と連携している「日本会議国会議員懇談会」に加盟する閣僚が、安倍も含めて実に13人もいる。安倍新内閣の極右的性格を雄弁に示している。
  • 安倍が任命した新閣僚で、最も警戒を要する一人は文部科学大臣の下村博文である。この男は「日本会議国会議員懇談会」の幹事長であり、極右歴史修正主義者として安倍と共に「教科書攻撃」を一貫して続けてきた。安倍が再び自民党の総裁に選任された直後に新設した「教育再生実行本部」の本部長であり、今回の総選挙に際し、自虐史観に基づく偏向教育の中止「宮澤談話」による教科書検定での「近隣諸国条項」の廃止愛国教育の強化――といった党の「教育に関する公約」を作成した。下村氏は、日本の侵略の歴史を認めたり、反省することが「自虐史観」だと主張している。今後、日本の歴史教科書の記述がどのように改悪されるか、国内外での注視が必要であろう。

5 世界が今後日本を警戒すべき理由

安倍は新首相になって再び、日本国内で極右歴史修正主義者として振る舞いながら、米国に出向くと「大変申し訳なく思う」とか「責任を感じている」などと口にする二枚舌を使うつもりなのか。日本国民ならず全世界の人々は、それを決して許すべきではない。

安倍は2012828日、テレビに出演し、「河野談話をそのまま維持すれば韓国と真の友好関係を結べない」という趣旨の発言をした。だが、韓国の人々にとってみれば、安倍のような人物が首相となり、あるいは「有力政治家」でいられ、さらには自民党のような恥を知らない徒党が支配的である限りは、日本に対して永遠に「真の友好関係」を築けるとは考えないだろう。これは韓国のみならず、アジア、ひいては全世界の国々にとっても同様のはずだ。

 改めて繰り返す。安倍のような極右歴史修正主義者たちが権力の頂点を握った日本が今問われているのは、国際社会の一角を占める正当な資格があるのか否かである。

 下村は2012年10月3日、アパホテルチェーンのオーナーとの会談で、「前回の安倍政権が掲げた『戦後レジームからの脱却』は、東京裁判史観や河野談話、村山談話など日本の近現代史の全てを見直すということです」と述べている。この「東京裁判史観」とは、安倍や下村など極右歴史修正主義者がよく口にするが、要するに日本を侵略国家として裁いた1946年5月3日から1948年11月12日まで開廷された極東軍事裁判は勝者による裁きであり、日本を侵略国家として裁いたのは認め難いという主張が前提にある。

 だが対日講和条約は第11条で「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾」する(Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan)と規定している。この「戦争犯罪」は、言うまでもなく中国を始めとしたアジア諸国への侵
略を指す。

安倍や下村が「東京裁判史観」を「見直す」ならば、論理的に考えると政府としてこの裁判の無効を宣言し、同時に日本との講和条約に署名した世界48ヵ国に破棄を通告しなくてはならなくなる。それがいかに非現実的で愚かなことか、安倍に象徴される日本の極右歴史修正主義者は理解できないらしい。

彼らは侵略の事実を頑として認めようとせず、「自存・自衛の戦争」と居直り、その事実を認めることは「自虐史観」と非難するのだ。しかも教科書を通じ従軍「慰安婦」や南京大虐殺の事実を教えることに対しても、執拗に妨害し続けている。このような勢力が再び権力を握ったことは、日本の民主主義と国際上の信頼性にとって大きな脅威である。同時にそれは、アジアを始めとした国際社会への挑戦なのだ。

この極右歴史修正主義者の挑戦に対し、世界は反撃すると共に、安倍が一歩国外に出たならば、現地で抗議行動が取り組まれ、開催されるだろう記者会見で報道関係者が上記に記した事実を確認する質問を提出することを強く望む。それは、安倍が国際的視野からすればいかに自身が恥知らずで、卑劣な存在であるかを思い知らせるための最も有効な方策となるだろう。

安倍に象徴される日本の極右歴史修正主義者は、ドイツのネオナチと同様に、自国民のみならず世界にとっても共通の敵なのだ。